路上ライブでホモのストーカーに遭った話②〜接近〜
前編はこちら
その夜はおっちゃんからの酒の誘いを断り帰宅した。
なんだかすげー疲れて、ボロいアパートに帰ってすぐ布団に入った。
眠りにつこうとした時、携帯が鳴った。メールだ。
「あんちゃん、来週いつ空いてる?」
背筋がぞわっとした。
別に、同性からの飲みの誘いだと思えばビビる事もない。
だけど今日会ったばかりの、素性も知れない小汚いおっちゃんは何故、こんなに僕を誘ってくるのだろう?何とも言えない気味悪さがあった。
メールは返信せず布団をかぶって寝た。
その日を境に、おっちゃんからのメールはしばらくなくなった。
俺もそんなことがあったのも忘れて、日々路上ライブに精を出していた。
おっちゃんは路上にも現れることはなかった。
数週間が経った頃、メールが来た。おっちゃんだ。
おっちゃんの携帯のアドレスは登録削除してたけど、見覚えのあるアルファベットの羅列ですぐに気がついた。
「家がわかったから、今度遊びに行くね」
やばいやばいやばいやばいやばい。
頭がぐるぐる回った。
なんで家がわかった?
路上ライブ後に後をつけられたのか?そうと考えるのが自然だ。
路上はいつも同じ場所、同じ時間にやってるから、どこかで見られてつけられたんだろう。もしかして今も家の近くにいるんじゃないか?
急いでアパートの鍵をかけて、部屋のカーテンを閉めた。
部屋を暗くする。
なかなか寝付けない。
サラサラと夏の雨の音がする。
とんとん、とんとん
ノックだ。
これが夢じゃなければ、誰かがぼくの部屋をノックしてる。
とんとん、とんとんとん
布団を被ったまま耳を塞ぐ。
汗が止まらない。
どれくらい経っただろう。
眠れたのか眠れてないのかよくわからないまま、気づくと朝になって、雨は上がってた。
カーテンは閉めたまま、思い切ってメールの返信画面を開いた。
仮にもこちらが同意して教えたメール。
しっかりと断りを入れたほうがいいだろう。そう思った。
昨夜のノックが夢か現実かどうか、は考えないことにした。
「どうして家がわかるんですか?迷惑なので辞めてください。」
返信が来た。
「飲みに行こうって言っても全然こないから」
「場所はわかってるから。家で飲む?」
「なんで言うこと聞いてくれないの」
「彼女とかいるの?」
連投してくる。
めまいがした。
あぁ・・・もうだめだ。
そう思ったぼくは最後の返信をした。
「僕とあなたは他人です。家を割り出したりされると迷惑です。これ以上続けるなら警察へあなたの連絡先を伝えます。」
これ以降、メールが来ることも、夜中にノックされることもなくなった。
しばらくの間は外へ出たり、路上ライブをするのが怖かった。
路上ライブへ出かける時は駐車場の場所を変え、アパートも引き払って実家へ帰った。
路上ライブは素晴らしい文化だ。
さまざまな出会いがあり、毎回がドラマになる。
耳にしてくれた人の日常が少しでも彩られればと願いながらぼくはうたっているし、それが喜びでもある。
だけど、そんな無防備な場所だからこそ、何があるかわからない、ってことも頭に入れておかないといけない。
僕のように男性に粘着されるケースは少ないと思うけど・・・
女子なんかはとくに気をつけて。
ヤバい奴はどこにでもいる。
僕の住む田舎にもいるんだから。
今は別の街に住んでるけど、もうあんな体験は二度としたくない。
・・・以上です。
ちょっとホラーっぽくなってしまったけど、事実です。
皆さんの路上ライフが、安全でハッピーなものでありますように!